(II)錯体と過酸化水素とのフェントン反応による抗がん活性

構
シクロメタル化ルテニウム(II)錯体と過酸化水素との
フェントン反応による抗がん活性
研究概要・成果
Introduction
Cl
プリン塩基のN-7位に結合することでDNA合成を阻害
ルテニウム錯体
副作用
NH3
Pt
腎障害
NH3
Cl
端
科
学
載
技
・加
術
推
工
進
等
機
は
合成触媒・高機能材料としての希少金属資源の超高度利用研究グループ
○松井尭宏(院生)、中井美早紀(化学生命工学部 化学・物質工学科 助教)、中林安雄(教授)
骨髄抑制
シスプラチン
n+
軽減
L1
L2
L6
消化器障害
睾丸腫瘍, 卵巣腫瘍等に特に優れ
た効果
耐性がん
L3
各種制がん剤に対する奏効率が非
常に低い
シクロメタル化の性質
シクロメタル化Ru錯体
+
C^N
N
Ru
C
[Ru(C^N)(bpy)2 ]Cl
N
N
Ru
N
N
N
PF 6
C
N
N
[Ru(C^N)(tpy)(CH 3 CN)]PF 6
金属(Ru)-炭素(C)間結合による炭素の負電荷が
生じる。
中心金属の電子密度が上昇し、酸化還元電位が小さく
なる。
C l-
還元剤(対象に電子を与える)として働く力が大き
くなる。
フェントン反応
Ru (II) + H2O2
Ru (III) + OH- + ・OH
DNA
酸化的DNA切断
金属(Ru)と過酸化水素(H2O2)の反応によって、さまざまな物質を酸化させるヒドロキシ
ラジカル(・OH)を生成。DNAと反応することで切断を起こす。
複
関
L4
フェントン反応が起こりやすくなる。
azobenzene
-
N
N
2-(p-tolyl)pyridine
(topy)
西
N
N
R u
N
2-phenylpyridine
(phpy)
写
・転
N
Cl
大
学
先
N
N
N
N
L5
長期大量投与が困難
肺の非小細胞がんにも有効な薬剤
N
Ru
断
応用分野、実用化可能分野
0.50 ± 0.13
2.6 ± 0.2
0.20 ± 0.03
2.3 ± 0.04
2.5 ± 0.3
1.3 ± 0.2
―
4.8 ± 0.3
。
IC50 / M
す
※
[Ru(phpy)(bpy)2]Cl
[Ru(azben)(bpy)2]Cl
[Ru(topy)(bpy)2]Cl
[Ru(phpy)(tpy)(CH3CN)]PF6
[Ru(azben)(tpy)(CH3CN)]PF6
[Ru(topy)(tpy)(CH3CN)]PF6
[Ru(bpy)3]Cl2
cisplatin
E1/2 a)/ V vs Ag / AgCl
(Ep / mV)
0.28 (71)
0.61 (73)
0.25 (60)
0.22 (79)
0.57 (87)
0.21 (66)
> 1.0
―
じ
Complex
ま
無
Table 1. Electrochemical data, in vitro cytotoxicity (L1210) and
lipophilicity of Ru(II) complexes.
log P o/wb)
>2
1.4 ± 0.1
>2
-0.42 ± 0.05
>2
-0.11 ± 0.05
―
―
禁
a) Ru(III / II) couple in 5 mM Tris-HCl / 50 mM NaCl (pH 7.5).
b) Lipophilicity parameter of Ru(II) complexes determined by measuring
the partition coefficients of 1-octanol / water system.
CVのRu(III/II)対における酸化還元反応は, シクロメタ
レーションにより酸化還元電位が大きく低下するのを確
認された。
L1210に対するIC50値は酸化還元電位の低さだけでなく,
細胞透過性を示す値である分配係数log Po/wも大きく関与
することが分かった。シスプラチンのIC50値は4.8 mMと
いう報告があり, L1210に対してシスプラチンより高い細
胞毒性を示すことが明らかとなった。これは細胞内の過
酸化水素とフェントン反応を起こし, ヒドロキシラジカ
ルを生成し, 効率的に酸化的DNA切断が起きていると考
えられ, 水溶性も有していることから, シスプラチンより
も抗がん剤として優れていることが考えられる。ゆえに,
他の腫瘍細胞に対しても高い抗がん活性を示すことが示
唆される。
問合せ先: 関西大学 化学生命工学部 中林安雄 E-mail:[email protected]
関人ORDIST
先
端
科
学
技
術
推
進
機
構
社会連携部 産学官連携センター、知財センター