構 水素結合能を有する ルテニウム(II)-ポリピリジン錯体の抗がん活性評価 研究概要・成果 Introduction 端 科 学 載 技 ・加 術 推 工 進 等 機 は 合成触媒・高機能材料としての希少金属資源の超高度利用研究グループ ○飯塚菜穂(院生)、中井美早紀(化学生命工学部 化学・物質工学科 助教)、中林安雄(教授) 白金(II)錯体であるシスプラチンは高い抗がん活性を示す が、強い副作用や耐性がんが存在することが知られてい る。そのため、副作用の軽減を目指して金属錯体を用い た新たな抗がん剤の研究が行われている。なかでも、 DNAに水素結合する金属錯体は、水素結合能をもたない 金属錯体よりも強くDNAと相互作用し、高い抗がん作用 を示すことが報告されている。そこで本研究では、1,6diaminohexane (hx)と1-aminohexane (ha)を含む混合配 位子ルテニウム(II)-ポリピリジン錯体を合成し、CT-DNA との相互作用をCDスペクトルとアガロースゲル電気泳動 法を用いて検討した。また、HeLa細胞に対する細胞毒性 をMTT試験法により求めた。 Results and Discussion (ha) Fig. 1. Ru(II) complexes used in this study. [Ru(bpy)2(ha)2]Cl2 (4) [RuCl(phen)2(hx)]Cl (5) [Ru(phen)2(hx)2]Cl2 (6) [RuCl(DIP)2(hx)]Cl (7) [Ru(DIP)2(hx)2]Cl2 (8) In vitro cytotoxicity assay 写 ・転 西 H2N CH2 CH3 [RuCl(bpy)2(ha)]Cl (2) [Ru(bpy)2(hx)2]Cl2 (3) Fig. 3. CD spectra of 20 M [poly(dA-dT)]2 (left) or [poly(dG-dC)]2 (right) in the absence and presence of 20 M 1 and 3 in 5 mM TrisHCl / 50 mM NaCl (pH 7.5). フェントン型反応 複 関 Oxdative cleavage Ru (II) + H2O2 → Ru (III) + ·OH + OH- 断 (hx) 6 5 大 学 先 Interaction with CT-DNA L= H2N CH2 NH2 Abbreviation [RuCl(bpy)2(hx)]Cl (1) ま 応用分野、実用化可能分野 抗がん活性 DIP > phen > bpy す ※ 。 無 DNA切断活性能 1 > 2, 3 > 4 DIP > bpy > phen 禁 じ 合成した水素結合能を有する錯体1、3、 5 - 8は、DNAに水素結合することによりDNAの構造を大きく変化させ ていることが明らかとなった。また、これらの錯体は過酸化水素存在下でのDNA切断が可能であり、錯体7、8は シスプラチンに近い抗がん活性を示した。これらのことから、正常細胞よりも過酸化水素の豊富ながん細胞に対 する毒性の方が高いと考えられ、副作用の小さい抗がん剤としての実用化が期待できる。 問合せ先: 関西大学 化学生命工学部 中林安雄 TEL:06-6368-0895 E-mail:[email protected] 関人ORDIST 先 端 科 学 技 術 推 進 機 構 社会連携部 産学官連携センター、知財センター
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