507 植 物 防 疫 第 68 巻 第 8 号 (2014 年) 新農薬の紹介 殺菌剤ザンプロ DM フロアブルの特徴 ―疫病とベと病をダブルブロック― BASF ジャパン株式会社 岡田 健一(おかだ けんいち) よびべと病に特異的な抗菌活性を有するピリミジンアミ は じ め に ン系の殺菌剤である。イニシウムⓇは,ミトコンドリア ザンプロ DM フロアブルは,BASF 社が開発したピリ での電子伝達系複合体 III(ComplexIII)におけるスチグ ミジンアミン系の新規殺菌剤成分イニシウム Ⓡ(一般 マテリンサブサイトに結合し菌のエネルギー合成を遮断 名:アメトクトラジン)とカルボン酸アミド系の殺菌剤 する。これまで,電子伝達系複合体 III を阻害点とする ジメトモルフ(商品名:フェスティバル )を混合した 殺菌剤は,阻害点によって,Qo 部位と Qi 部位の二つ 疫病・べと病用殺菌剤である。平成 19 年より試験番号 の作用機作に分類される。イニシウムⓇ は,Qo 部位や BAF―0701 フロアブルとして(一社)日本植物防疫協会 Qi 部位とは異なる部位スチグマテリンサブサイト(QoS) Ⓡ を通じ全国の農業試験機関等で委託試験が実施され,優 を阻害し,QoS 阻害剤に分類される。この作用機作に れた効果が確認された。平成 26 年 4 月 24 日付で,ザン 分類される殺菌剤はイニシウムⓇが初めてである。この プロ DM フロアブル(アメトクトラジン 27.0%,ジメ 作用機作は,殺菌剤耐性菌対策委員会(FRAC)へ提案 トモルフ 20.3%)で登録を取得した(表―1)。以下に本 され受理されている(2014 FRAC code : 45) 。また,イ 剤の作用特性および特徴を紹介し,今後の防除薬剤選択 ニシウムⓇは卵菌類に活性のある殺菌剤グループとの交 の一助となれば幸いである。 差耐性は確認されていない。 植物防疫 イニシウムⓇは,①低薬量で疫病,べと病に高い活性 I 有効成分とその特徴 1 を持つ,②遊走子の遊泳を速やかに阻害する(遊走子の Ⓡ 新規殺菌成分イニシウム (一般名:アメトクト 破裂) ,③葉のワックス層へ速やかに吸着され,水分に ラジン) よって再分散する,等の特性を持っている。 Ⓡ イニシウム は,卵菌類(Oomycetes)に属する疫病お イニシウムⓇ を含む製品は 2010 年にルーマニアで初 表− 1 登録内容(2014 年 4 月 24 日現在) 農薬登録番号:第 23455 号 一般名:アメトクトラジン・ジメトモルフ水和剤 商品名ザンプロ DM フロアブル 作物名 適用 希釈倍数 病害虫名 ばれいしょ 疫 病 トマト ミニトマト 使用液量 1,000 ∼ 1,500 倍 100 ∼ 300 l/ 10 a 250 倍 25 l/10 a 1,500 ∼ 2,000 倍 たまねぎ 2,000 ∼ 3,000 倍 本剤の 使用回数 使用 方法 アメトクトラジン を含む農薬の 総使用回数 3 回以内 100 ∼ 300 l/ 10 a ジメトモルフ を含む農薬の 総使用回数 3 回以内 散布 3 回以内 収穫 7 日前まで ベと病 大粒種ぶどう 収穫前日まで 1,500 倍 きゅうり 小粒種ぶどう 使用時期 200 ∼ 700 l/ 10 a 収穫 60 日前まで 収穫 30 日前まで 2 回以内 ― 70 ― 2 回以内
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