さまざまな自己免疫疾患における 自己抗体検出キットの開発

さまざまな自己免疫疾患における
自己抗体検出キットの開発
大阪大学
微生物病研究所 免疫化学分野
教授 荒瀬 尚
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自己免疫疾患と自己抗体
• ほとんどの自己免疫疾患では、自己抗原に対
する特定の自己抗体が産生される。
• 自己抗体は病態に密接に関与している。
• 自己抗体の抗体価の測定は、自己免疫疾患
の診断に必須である。
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従来技術とその問題点
• 自己免疫疾患における自己抗体の検出には、
精製タンパク質やリコンビナントタンパク質が
用いられてきたが、感度が十分でなかったり、
特異性が低い場合がある。
• 自己抗体に対する真の標的抗原を用いれば、
感度、特異性が改善されるはずである。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 自己免疫疾患の自己抗体の標的分子が、
MHCクラスII分子と会合したミスフォールドタ
ンパク質であることを発見。
– Proc. Natl. Acad. Sci. USA in press
• MHCクラスII分子と会合したミスフォールドタ
ンパク質に対する自己抗体を調べると、従来
の測定方法と比べて、感度や特異性が非常
に高い。
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ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体が
自己抗体の標的分子である
自己抗体
Y
炎症・感染
自己応答性
B細胞
自己抗体
IFN-γ
α
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
in press
β
MHCクラスII
α
β
MHCクラスII
ミスフォールド
蛋白質
ERAD
タンパク分解
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ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体
に対する自己抗体の検出方法
自己抗原 + MHCクラスII + GFP
遺伝子導入
293T細胞
患者血清
+ 蛍光標識抗ヒトIg抗体
フローサイトメトリーによる
自己抗体の結合解析
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関節リウマチ
• 関節に対する自己免疫疾患
• 日本人の約1%が罹患
• 患者の約8割でリウマチ因子や抗CCP抗体が陽性になる。
• リウマチ因子は変性したIgGに対する自己抗体であるが、生理
的に変性したIgGがどのように作られるかが不明である。
• RF陽性の健常人は、RF陰性の健常人と比べて、関節リウマチ
になる可能性が26倍高い (Nielsen et al. BMJ 2012)。
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関節リウマチ患者の自己抗体は
IgG/MHCクラスII複合体を認識する
without MHCクラスII
with MHCクラスII
IgM RF
sIgG
sIgG H
HLA-DR
IgM RF
mIgG H+L
+
Ig αβ
mIgG
MHCクラスII
IgG
自己抗体
• IgGが重鎖が軽鎖を伴わずHLA-DRに提示される。
• リウマチ因子はHLA-DRに提示されたIgGは認識するが膜
型IgGは認識しない。
Igαβ
X
IgG/MHCクラスII複合体は関節リウマチの
自己抗体の特異的標的抗原である
全身性
エリテマトーデス
抗リン脂質抗体
症候群
健常人
リウマチ因子
(抗IgG Fc抗体)
関節リウマチ
抗IgG/MHCクラスII分子複合体抗体価
•
•
•
従来用いられてきたリウマチ因子は関節リウマチに特異的でない。
抗CCP抗体価もRAの診断に用いられているが、病状はリウマチ因子の方が
良い指標である。
抗IgG/MHCクラスII分子複合体は関節リウマチの診断に有用である。
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特定のMHCクラスIIのアリル(型)は多くの
自己免疫疾患の感受性に最も強く関与している
HLA-Class II
関節リウマチ
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卵白リゾチーム/HLA-DR
複合体
IgG/HLA-DR複合体に対する
自己抗体の結合性
IgG/MHCクラスII複合体に対する自己抗体が
関節リウマチの感受性に関与している
関節リウマチ感受性
関節リウマチ感受性
• IgG/HLA-DR複合体が関節リウマチの原因分子である可能性が
考えられる
想定される用途
• 今まで検出困難だった自己抗体の検査キット
の開発
• 今までより特異性の高い自己抗体の検査キッ
トの開発
• 本検出方法を用いた新たな自己免疫疾患治
療薬のスクリーニング
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実用化に向けた課題
• 現在、自己抗原とMHCクラスII分子との複合
体は、自己抗原とMHCクラスIIを発現させた
細胞でしか合成できないため、現状では自己
抗体の検出には、細胞を用いる必要がある。
• 実用化に向けて、自己抗原/MHCクラスII分
子複合体をプレートやビーズに固相化したの
ものを用いて自己抗体を検出するシステムの
作製が必要である。
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企業への期待
• 臨床検査薬の開発技術を持つ企業との共同
研究が望ましい。
• 自己免疫疾患の標的分子であるミスフォール
ド蛋白質/MHCクラスII複合体を標的にした
新たな治療薬の開発に興味のある企業には、
本技術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :
自己抗体の検出方法、自己免疫疾患の罹患の可能
性を試験する方法、自己抗体の検出試薬および自
己免疫疾患用の試験試薬
• 出願番号
• 出願人
• 発明者
: PCT/JP2014/050796
: 大阪大学
: 荒瀬尚、荒瀬規子、
谷村憲司、金暉
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お問い合わせ先
大阪大学免疫学フロンティア研究センター
免疫化学研究室 教授 荒瀬 尚
TEL:06-6879-8291
FAX:06-6879-8290
e-mail:[email protected]
大阪大学産学連携本部 知的財産部
産学連携教授 小此木 研二
TEL:06-6879-4859
FAX:06-6879-4205
e-mail:[email protected]
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