ニューヨーク郊外の 学校生活

E S S A Y
ニューヨークとその近郊から
増田 哲弥
ニューヨーク郊外の
学校生活
ロックフェラーグループ社
( ARES マスター M0902403 )
ニ
ューヨーク郊外を車で走って
われば 11年生
(日本の高校 2 年生)
いると、広い敷地に重厚な趣
で卒業することもできますし 、実際
の建物があるのが見え、歴史的建
にそうした生徒も多くいます。反対
築物かなと思って近付くと公立の高
に留年する生徒も多く見られます。
校や中学であったりします。勿論、
年齢に合った教育というよりは、そ
すべての学校が立派という訳ではな
の個人の能力に合った教育を受けさ
く、裕福な人々の住む学校区とそう
せるという方針です。
でない学校区の差も大きいですが、
私の住むエリア周辺の学校の多く
ぶ違う印象です。知識を教えるとい
は、緑も多く恵まれた環境にありま
うよりは、生徒に考えさせることに
す。高校生と中学生の私の二人の
主眼を置いているので、あるテーマ
子供もこうした学校に通っています。
についての自分の意見 、その理由、
学校は外観だけではなく、学校
生活も日本とはだいぶ違うようです。
ますだ てつや
1990 年三菱地所株式会社
入社。経理部、ロックフェ
ラーグループ社出向、三菱
地所投資顧問株式会社出向
等 を 経 て 2013 年 4 月 よ
り再び三菱地所の米国子会
社であるロックフェラーグ
ループ社に出向中。
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ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.23
授業や宿題の内容も日本とはだい
そしてその意見をサポートする証
拠・資料を家で準備していき、学校
まず、時間割が違います。そもそ
で発表し議論するというタイプの授
も、中学生でも、クラス全員で同じ
業が多いです。ある時には、誰でも
授業を受けることはなく、各個人の
良いので尊敬する人物の伝記を読
能力に合わせてカウンセラーが組ん
み 、みんなの前でその人物になり
でくれる時間割に従って授業を受け
きって、
「自分が何を成し遂げたか」
ます。その生徒の能力によっては、
「 如何にしてそれを成し遂げたか」
一つ下の学年の授業を取ったり、上
「 それが社会にどういう形で貢献し
の学年の授業に出たりもします。高
たか」をアピールするという課題が
校になると大学と同じく単位制なの
ありました。単にスピーチをするの
で、授業を多く取って単位を取り終
ではなく、衣装もその人をまね、小
こちらは隣町の公立高校
道具も使ってその人物になりきりパ
れ 、同じ国出身の生徒がグループに
ス・クラン:アメリカの白人至上主義
フォーマンスをしなければなりませ
なり、その国の食べ物を持ち寄り、
団体)
どちらがいい?』といった主旨
ん。
その国に因んだパフォーマンスを披
の心無い落書きがされ 、何人かの
当然のことながら、こうした教育
露し 、お互いにお国自慢を競い合い
生徒達がそれに対し投票をしてい
に慣れているアメリカ人の生徒たち
ます。ウクライナチームのコサックダ
た」という事実の説明、それに対し
は自己主張が強く、議論好きで、授
ンス、アイルランドチームのアイリッ
て学校が再発防止のための教育を
業でも活発に質問や意見が出るよう
シュ・ステップダンスなどは、レベル
徹底していく旨の決意が、長い文章
です。言葉の壁のある中、日本から
が高く会場が大きく湧きました。勿
で書かれていました。身近にこうし
来た生徒がそうした授業に参加して
論、日本チームもソーラン節で健闘
たことが起こることも少し驚きでし
いくのはそれなりに大変そうです。
していました。多種多様な人々が一
たが、それ以上に学校の迅速で丁
緒に暮らしているコミュニティの良さ
寧な対応を見て、人種問題が今でも
を実感できる夜でした。
アメリカ人の中で非常に根深くセン
また、アメリカは移民の国ですの
で、学校にも様々な人種、宗教、出
身の生徒がいます。私の住むエリア
一方で、当然ながら影の側面もあ
シティブな問題であることを再認識
は元々イタリア系移民の多い地域で
ります。ある日、学 校の校長から
すが、それだけでなく、ドイツ、ロシ
「 Important Letter 」というタイトル
このように、良くも悪くも日本では
ア、中国、アルバニア、カンボジアな
の E-mail が届きました。子供が何
経験できない環境で思春期を過ご
ど世界中から移り住んできた家庭の
か問題でも起こしたかと思い慌てて
す子供達がどのような大人に育つの
子供が集まっています。
開けてみると、全保護者に向けたレ
か 、心配ながらも楽しみな毎日で
学校では、定期的にインターナ
ターが添付されていて、
「学校のトイ
す。
ショナル・ナイトという催しが行わ
レに
『ナチスと KKK
(クー・クラック
しました。
January-February 2015
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