ニバルレキレ

ソーシャルワーカーだからこそ
できること
﹁ニバルレキレ∼ I am special!
∼﹂
は、
小山えり子さんが代表を務めるNGO
の名前。ちょっと変わったこの団体名
には、ある熱い思いが込められている。
小山さんはソーシャルワーカー。東
京都内の病院で勤務していた時、在留
資格のないアフリカ人の患者が搬送さ
れ た。末 期 のHIV/ エ イ ズ 患 者。ア
フリカに関心を持ったきっかけだった。
ある日、ふと新聞の小さな記事に目
が留まった。南アフリカのホスピスで
日本人が活動しているという内容だっ
携わったのは、
HIV/エイズ患者やそ
ヨハネスブルクの貧困地区で活動した。
う 決 意 し、2 0 0 3 年 か ら 約 2 年 半、
う!﹂
。何かの縁を感じた小山さんはそ
V/エイズ患者の多い国。
﹁行ってみよ
隣接するエクルレニのスラムを回って
思 い 立 っ た ら 即 行 動。小 山 さ ん は、
した﹂と小山さんは振り返る。
っと深く知りたいと思うようになりま
エイズに感染したのか⋮。職業柄、も
暮らしをしてきたのか、なぜHIV/
いくのが仕事です。患者さんがどんな
る制度や里親になると補助を受けられ
﹁エ イ ズ 孤 児 が い る 家 庭 に 食 料 を 配
ムの暮らしを目の当たりにした。
貧困のあまり食べるものさえないスラ
く し て う つ 病 に な っ て し ま っ た 人 や、
取ったものの、自分も次々に家族を亡
したりするように。エイズ孤児を引き
するセチャバコミュニティーセンター
地区に〝一緒に生きる共同体〟を意味
しい一歩が始まりますから﹂
。
くれるのを待ちます。その瞬間から新
度も直接会って、相手が本音を話して
含めてみんなソーシャルワーカー。何
レキレのメンバーは、現地スタッフも
た。同国は世界でも3 本指に入るHI
の遺族、
HIV/エイズで親を亡くした
る制度もあるのに、スラムの人は全く
年には、エクルレニのエマプニペ
エイズ孤児のケアだ。
﹁ソーシャルワー
話 を 聞 い た り、
HIV/ エ イ ズ 教 育 の
を設立。約15 0 人のエイズ孤児が放
アで食事を用意したり補習を行ったり
する。小山さんも年に数回、南アフリ
れは、南アフリカで使われているズー
レキレ〟はどう?﹂と提案された。こ
らは活動に名前を付けたら?〝ニバル
は 次 第 に 心 を 開 い て い っ た。
﹁こ れ か
〝何でも屋〟の小山さんに、地域の人々
の治療薬にマリファナやヘロインを混
対 策。無 料 で 手 に 入 るHIV/ エ イ ズ
組み始めたのは、若者の薬物依存への
J ICA基 金﹂を 活 用 し て 新 た に 取 り
そして最近、
﹁世界の人びとのための
の力で運営できるようになってきた。
す﹂と小山さんはほほえむ。
ルー語で﹁あなたはあなたであるだけ
ぜた薬物が流行しているからだ。そこ
フのムズワキさんを中心に、彼ら自身
で素晴らしい﹂という意味。そんな思
カに渡航してサポートし、現地スタッ
いを込めて団体を立ち上げ、今も活動
られる施設﹁ハウスオブメルシー﹂と
と、家族は経済的にも精神的にも打撃
働き手がHIV/エイズで亡くなる
解 決 策 を 共 に探 し
新 しい道 を 進 む
世界に一つだけの大切な命だと伝えた
どんな状況でも、どんな人も、この
制度は他にほぼないからだ。
動や若者の進学相談を行っている。
連携し、薬物乱用防止に向けた啓発活
を受ける。喪失感から立ち直れず、学
を続けている。
で、薬物依存から立ち直る治療を受け
ど ん な こ と に も 力 の 限 り 奔 走 す る
と、彼らの背中を少しずつ押していま
書類を準備したり病院に 掛け合ったり
05
歳以上のエイズ孤児を支援する施設や
い ︱。
﹁老 若 男 女、
〝生 き づ ら さ〟を 抱
ズ孤児も多い。
がずっと変わらないニバルレキレの信
んでいくだけ﹂と語る小山さん。それ
切にできません。まずは自尊心を取り
念だ。
える人の重荷を減らせるように共に歩
戻してもらう必要があります。ニバル
﹁自 分 を 大 切 に で き な い と 相 手 も 大
校も卒業できずに退学してしまうエイ
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「ハウスオブメルシー」で薬物依存と向き合い、社会
復帰を目指す若者たち
患者が治療薬を売ってしまうこともあるため、薬物乱
用の危険性を伝えるワークショップを開催
カーは相手がどんな問題を抱えている
知りませんでした。将来の選択肢が広
スラムの入り口にある
セチャバコミュニティー
センターの庭で、
スタッ
フと遊ぶエイズ孤児た
ち。子どもらしく過ごせ
る時間をつくり出す
がるのに⋮。そこで、手続きに必要な
心のケアで輝く一人一人の命
普及や患者の自助グループの手伝いを
ニバルレキレ
かに耳を傾け、解決策を一緒に探して
国 際 協 力 の 担 い 手 た ち
課後に通い、地域の人々がボランティ
「顔と顔を突き合わせて相手と深く関わっていくのがニバルレキレの強み」
と話す小山さん
(右)
18
February 2015
February 2015
19 人々の心を照らそうと奮闘するNGOがニバルレキレだ。
エクルレニ
HIV/エイズが社会に影を落とす南アフリカで、
ヨハネスブルク
それから解放された瞬間、人は少しずつ変わっていく。
プレトリア
ずっと自分の中にしまい込んでいた深い悩み。
南アフリカ
∼ I am special ! ∼
セチャバコミュニティーセンターでは無料で
エイズ孤児を受け入れ、現地スタッフと地
域のボランティアで運営している
セチャバコミュニティーセンターに通う近隣の小学校の子ども
たち。ボランティアが準備した給食を提供