平成26年度北海道小学校長会地区活性化支援事業【研修レポート】 1 実施地区 : 胆 振 地 区 2 研修者氏名(学校名): 反保 秀規(苫小牧市立若草小学校) 3 研修実施日 : 平成26年7月26日(土)~8月1日(金) 4 研修先 : ニュージーランド クライストチャーチ教育省 Oxford Area School St Joseph’s Catholic School 5 研修目的 : 海外教育事情視察並びに国際交流 6 キーワード : 「教育改革」 St Heliers School はじめに 平成26年度第41回全連小海外教育事情視察団20名の一員として,真冬(とは言っ ても北海道の5月ぐらいの気候)のニュージーランド(以下NZ)を訪れました。独自の 教育改革を進めるNZの教育について,計画を推進する教育省と,実際に教育を行う学校 への訪問を通して学ぶことを目的とした 1 週間の視察でした。 1 国と学校理事会と校長と保護者の役割 最も印象に残ったのは、国・学校理事会・校長・教師・保護者の役割分担です。それ ぞれが、互いの役割を認めその遂行を求めていこうとする姿勢が強く印象に残りました。 (1)国・州(教育省) NZでは、国が「National Standard」を定め、幼児期から教育の場(週 20 時間) を設定しています。保護者の収入などを基に、全学校を 10 の段階に分け、社会経済的 に不利な校区の学校に多くの予算をつぎ込みます。明確な数値目標と達成度を掲げ、 国が「教育の基盤について責任をもつ」という姿勢が伝わってきました。 (2)学校理事会(Board of Trustees) 選挙で選ばれた保護者の代表、教師の代表、児童・生徒の代表、校長により構成さ れる最高決議機関。学校予算の執行、カリキュラムの進行状況、教科の到達度などを チェックします。教員の採用・クラスの人数についても、この理事会で決定されます。 (3)校長 学校運営の責任者。訪問した学校には、校長の他に 副校長と校長の秘書がいました。学校理事会で運営に 関わる説明を行い、国に対しても到達度や課題を説明 し、予算要望を行います。定年はありませんが、成果 が上がらなければ、異動・免職もあります。 (4)保護者 登下校やそれぞれの発達段階における身に付けるべ き力の獲得について、保護者は責任をもちます。右に 示した写真は、教育省の待合室(子どもの玩具や絵本 などがある)に貼ってあった、保護者向けのポスター 「子育てピラミッド」です。 2 学校での教育 (1) 「読み・書き・算数」が中心 教科書はなく、担任の教師が用意したプリントを使って 学習を進めます。内容は「読み・書き・算数」が中心で、か け算は「16 の段」まで学習していました。学習終了時のテ ストには、児童の自己評価と教師の評価が書かれ、それを 教室内に掲示していました。また、訪問した学校では、週 2 回「form time」という時間を 45 分設定し、遅れている 児童の補充学習を行っていました。 (他は読書や自習) (2)モーニングティ・ランチタイム 11 時になると「モーニングティ」になり、子どもは遊び 先生方は休憩になります。多くの児童が裸足で遊び回って 【巡回する高学年の子】 います。先生方はクッキーなどをつまみながら、お茶を飲 み休憩します。ただし、当番の高学年の児童と教師は巡回し、 トラブルの対応に当たります。また、訪問した学校には「購買 部」があり、ここでも当番の児童が店頭に立ち、必要な児童が クッキーやサンドイッチを買い求めていました。 お昼は各自が弁当を持参し、 「初めの 10 分間は座って食べる」 という約束さえ守ればどこで食べてもよく(天気の良い日は外 【裸足でサッカー】 も可)、約束の 10 分が過ぎると、遊びに行く、おしゃべりをし ながら弁当を食べ続けるなど、それぞれに過ごしていました。 (3)特別支援教育 特別支援学校も国内に数校ありますが、基本的には居住する地区の学校で教育を受 けます。インクルーシブ教育が推進され、障害種により特別支援学級を設置するので はなく、いわゆる通常学級で学習します。その児童に必要な支援をするために、国は 専門家を派遣し、学校理事会は学校の予算を使ってサポートティチャーを付けます。 (4)研修・任用 教員研修の講師は、国が契約する専門のスタッフが務めます。免許更新は 3 年ごと に校長がチェックリストに従って評価します。年齢の高い教師には新しい知識・技能 の獲得を、若い教師には指導法の研修を実施します。また、指導力不足の教師につい ては、外部で研修を受け、それでも課題が解決されなければ免職となります。管理職 については、年齢は全く関係なく、試験をクリアすれば登用されます。 おわりに 全連小がここ数年にわたりニュージーランドを視察している意図が、実際に現地を訪れ て実感することができました。国家予算の多くを教育費につぎ込む国のスタンスと、実際 に学校を運営する校長の自信と戦略。計画も到達度も全て公開し、国・学校・保護者が、 それぞれに「未来を担う子どもたち」を育てようとする当たり前の姿勢に、多くを学ぶこ とができました。教育改革を推進するクライストチャーチ教育省のリーダーが話した「私 たちは、もう、絶対に戻りません」という言葉が、いつまでも私の耳に残りました。
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