ジュニャーナパーダ流の修習次第 - J

(112)
印 度 學 佛 教 學 研 究 第51巻
第2号
平 成15年3月
ジ ュニ ャー ナパ ー ダ流 の修 習 次 第
―
Dvkramatattvabhavana-Mukhagamaのthig
le bzhi(catur-bindu/-*tilaka)
菊
1イ
谷
ン ド後 期 密 教 期(A.D.8-12.)に
竜
太
位 置 す る 学 僧 の 一 人 ,Jnanapada(ca.750-800)
の 主 著Dvikyamatattvabhavana-Mukhagama(DBhM
antabhadrasadhana(SS,P.2718),究
,P.2716)1)に
竟 次 第Muktatilaka(MT
次 第 を 統 べ る 二 次 第(dvikrama)の
修 習(bhava11の
,P.2722)の
bindu/-tilaka)の
体 系 に 纏 め て い る .こ
要 素 を 含 ん で い て,歓
は,1)D:BhMの
「四 点 」(thig
は じ めPrajnatantra系
喜 説,遷
移(utkranti)説
し,3)Jnanapada流
の 先 駆 的 記 述 が み ら れ る .本
(aksara),2・gsangba(guhya),3.sprulpa(lnirmitta)」
[1]dga'gsum
[1.1]mi
の こ れ ら 三 種 のbinduyogaを
纏 め て
gsum
bsgom
pa
shigs pa'i thig le(aksara-bindu/一tilaka)009a4-010b1
[1.3]spi-ulpa'ithigle(ninnittaー)011a3-012b7
[2.1]de
cig skyes pa yi ye shes mi shig sthig le bsgom
nyid thig le(tattvaー)012b7-014a4
921
し て,生
pa
shigs
連
起 次 第 か ら究
「四 点 」 と 呼 ん で い る .対
示 す と 以 下 の 様 に な る3) 。
bye brag gi thig lernam
みⅡ
一 点 に収 數 す る究 竟 の 段
以 上 の 二 段 階 か ら な る2) .そ
[1.2]gsangba'ithigle(guhyaー)OIOb1-011a3
[2]lhan
容 的 に,[1]「1.mi
記 の 三 種 のbinduが
竟 次 第 に 至 る 一 連 の 四 種 のbinduyogaを
のSynopsisを
稿 で
述 べ られ
次 第 の 修 習 階 梯 へ と体 系 化 す る意
述 べ ら れ る 二 次 第 の 体 系 は ,内
続 的 に 修 習 す る 生 起 の 段 階 と,[2]上
「4・denyid(tattva)」binduの
,2)DBhMに
ら 類 推 出 来 る 様 に ,Guhyasamajatantraに
ら れ る 複 数 の 瑜 伽 組 織 を 統 合 す る と 同 時 に,二
図 を も っ 。 こ の:DBhMに
献 群 とも共 通 す る
の 二 次 第 に 関 す る 教 義 的 特 徴 を 考 察 し よ う.
JnanapadaのD:BhMは,Titleか
階
弟 子Vitapada(ca.850-900)
統 のtantra文
「四 点 」 の 基 本 的 構 造 を 術 目
敢す る と共 に
る修 習 の 倖 階 を 紹 介
le bzhi;catu,
「四 点 」 が 主 題 と し て 論 じ ら れ -る:D:BhM
の
教 説 に 拠 る 一 方 で ,Jnanapadaの
が 述 べ る 様 に,Sajnayogaを
こ れ ら両
が 述 べ ら れ る .Jnanapadaは,生
起 次 第 か ら 究 竟 次 第 に 至 る 一 連 の 流 れ をbinduyogaの
は ・(Guhyasamajatantraの
は,・ 生 起 次 第Sam一
応 箇 所
ジ ュ ニ ャ ー ナ パ ー ダ 流 の修 習 次 第(菊
上 記 のSynopsisか
binduに
密),sprulpa(化
「
心 臓 の 先 端,性
(rlung;vayu,prana)」
作)」 のbindu各
終 え,[2]の
binduが
が 集 中す る時
「ananda(歓 喜),parama。(最
の 各binduに
「気 息
上 歓 喜),virama。(離
す べ て修 習 し
体 の 上 下 に 位 置 す るsprulpaとgsangbaの
両
shigs thig leの 方 へ 移 動 し て,「 随 滅(rjesgzhig;anubheda)」
の観 想
点 が 一・
点 に 収 束 す る と述 べ ら れ る .こ
生 じ る.以
上 の 歓 喜 説 は,歓
の瞬間
「sahajajnana(倶 生 智)」 が
喜 の 移 動 方 軌 に 関 して 上 昇 ・下 降 の 両 方 の 性 質 を 備
え て い る 事 か ら,Hevajyーa,5岬
III上
「mishigs(不 壊),
に,[1.1]一[1.3]のbinduyogaを
の 如 く,三
論 に 先 行 す る 上,系
区 別 す る際
種 は,「 神 経 叢('kh・rl・;cakra)」 の 中 心
鼻 の 先 端 」 に 位 置 し,こ
項 目 に 到 達 す る と,身
中 央 のmi
項 目 に み られ る
器 の 先 端,上
歓 喜)」 が 随 時 に 生 じ る と述 べ る.次
(113)
四 種 のbinduyogaを
固 有 に 対 応 す る 四 歓 喜 を 用 い る .[1]の
gsangba(秘
点
ら分 か る様 に,Jnanapadaは
谷)
γα澗 系 のtantra群
に登 場 す る
「
四 輪 三 脈 」 の身 体
統 も 異 な る歓 喜 説 と し て 注 目 す る 事 が 出 来 る.
述 の:D:BhMの
二 次 第 修 習 は,基
を 段 階 的 に 衰 滅 さ せ る 事 に よ っ て,最
本 的 に16種
の概 念 作 用
「
憶 念(anusmrti)」
後 に 概 念 作 用 が 全 く機 能 し な い
「甚 深 と顕
明 の 無 二 の 光 明(zab gsal gnyis med'od zer)」 の 境 地 に 導 く過 程 を 繰 り返 し実 践 す る も
の で あ る.そ
して
「四 点 」 は,こ
明('・dzer;prabhasvara)」
獲 得 す る こ の 方 軌 は,究
を も つmi
のcittaの 概 念 作 用 を漸 次 に 衰 滅 し,最
に 至 る 修 習 の 位 階 に 対 応 す る.sahajajnanaの
極 的に
「1)aksara→2)j蘭na→3)aloka」
shigs thig le(denyido)のyogaに
纏 め られ,gsang
leに 付 随 す る 憶 念 と金 剛 念 誦(vajrajapa)の
事 は 無 く,D:BhMの
「
気 息」 と 「
識(vijnana)」
binduは
光 輝 を 放 つsnang
(maricika)を
体 的 に は,1)生
shigs thigleに 収 敏 し,2)左
二 智 を 中 央 脈 管 のavadhutiに
も つyeshesー(jiiana・)へ
変 化 し,3)binduが
が 徐 々 に 衰 滅 す る と,概
pa thig
体 諸機
右 の 「
脈
収束す る
絡 め取 る
念 作 用 も 次 第 に 機 能 を 失 く し,
ba'(al・kao)の 状 態 に な る.概
は じ め とす る 五 兆 相(paiicanimitta)が
の 位 階 を,Jnanapadaは,世
の 一.連 の 流 れ
両 修 習 も基 本 的 に こ の 方 軌 を 逸 脱 す る
能 を司る 「
気 息 」 を 心 臓 の 先 端 に 位 置 す るmi
事 でbinduはadvayajnanaを
「
光
「
光明」 を
ba thig leとsprul
内 容 的 特 徴 に 関 す る核 心 と言 え る.具
管(rtsa)」 に 個 別 に 流 れ るpraj箇,upayaの
後 に
念 作 用 の衰 滅 に伴 い 陽 炎
出 現 す る.以
上 の:D:BhMの
修習
俗 ・勝 義 の 二 諦 と 二 諦 無 差 別 の 実 践 とい う 観 点 か ら 論
じ て い る.
Jnanapadaの
Ⅳ 勝義諦 を
二 諦 説 で は,α
世俗諦 を
「
離 分 別 の 甚 深(drtags bral zab m・)」,β
「
正 真 実 の 顕 明(yang dag gsal ba)」,γ
二諦 無差 別 を
の 光 明(zab gsal gnyis med'od zer)」 と呼 ん で い る.mi
920
「
甚 深 と顕 明 の 無 二
shigs thig le(denyido)の
修 習
(114)
は,こ
ジ ュニ ャ ー ナ パ ー ダ 流 の 修 習 次 第(菊
の α →
γ の 実 践 に 対 応 す る.:DBhMに
は,二
谷)
諦 説 と共 に
「1-1)Vaibhasika,
1-2)Sautrantika→2)Yogacaravadin→3)Madhyamika」
と い う 「修 習 の 階 梯(bhavan一
akrama)」
ma pa;Yogacara-Madhyamika)」
が み ら れ,「
瑜 伽 行 中 翻(rNal'by・rspy・dpa'idbu
と 述 べ ら れ るJtianapadaの
anapadaの
思 想 的 立 場 の 根 拠 の ひ と つ と な っ て い る4).一
二 諦 説 がsahajajnanaの
提 に 論 じ ら れ る 事 は,論
「光 明 」 に 至 る___.連 の
じ る 際 にyoginのVisonを
表 現 す る術 語
「光 明 」 を 使 用 す る 事 か ら も 明 ら か で あ る.以
教 義 的 特 徴 は,i
mi
shigs thig le(denyido)を
仏 教 四学 派 の 修 習 の位 階 と
方 で,Jn一
「四 点 」 のbinduyogaを
「甚 深 」・「顕 明 」・
上 の 事 か ら,Jnanapadaの
基 本 とす る
前
二 次 第 の
「四 点 」 のbinduyoga,ii
「四 点 」 の 両 者 を 統 括 す る 二 諦 説,以
上 の二 点 に 纏 め
得 る.
ŽQ•l•¶Œ£:ˆêŽŸ
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イ ン ド密 教 儀 礼 研 究 』 法 蔵 館,吉
水 千 鶴 子1985「Jnanapada流
館,
にお ける
「瑜 伽 行 中 観 」 説 」 『印 度 学 仏 教 学 研 究 』34-1:381-383]
1)Texts作
成 に,Co
ne,[rGyud]Di.lal-17b2;sl)edge(1853)Di.lal-17b2;sNarthang,
[rGyud]Ti.1b1-20b3;Pecin,(2716)Ti.lbl-20b5]の
の 術 語 は,MT(P.Ti.61a6)に
DBhMに
四 版 を 使 用.2)denyid(tattvao)
拠 る.3)SynopsisのLocationは
北 京 版 の も の.4)
み ら れ るJSSvv.20-8.(P.8a5-8b3),LAXvv.256-8.(P.9a5-7)のParalle1は,J-
rianapadaの
Jnanapadaの
宗 義(gmbmtha'siddhanta)で
修 習 の 階 梯 は,直
[1935(Fascicle.7):884-5]).Jnanapada流
吉 水[1985]に
あ る とVitapadaは
接 の 師HaribhadraのAAAの
の
述 べ る(SukusunraP.132b5-8).
記 述 が 参 考 に な る(Wogihara
「瑜 伽 行 中 観 」 思 想 とMAの
思 想 的 関 係 は,
詳 し い.<Keys words>Guhyasama,Jnanapada,Dvikramaatatvabhavana-mukhagama
.
(東 北 大 学 大 学 院)
919