ヘルスケア スポーツジムなどに通う高齢者が増えた半面、介護サービスを受ける人たちも増加している 年までに九州の人口 246万人減少の衝撃 2040年までに九州の125 市区町村が消滅、人口は 年と 40 的なデータが最近公表された。 比べ246万人減少―そんな衝撃 10 代の女性が半減すれ 市区町村消滅は昨年5月、民 間 研 究 機 関、日 本 創 成 会 議 の リ ポートで明 らかになったもの ― 20 30 年 年の九州の推定 人口を1074万人、つまり 40 では 万人減っている。 口が減少、すでに直近の 年集計 間で大分・宮崎両県を合わせた人 30 問題研究所が 口については国立社会保障・人口 る可能性がある」としている。人 州では125市区町村が「消滅す うち約半分の896市区町村、九 ば、全国1800ある市区町村の で、 健康寿命延伸し医療費抑制 巨大市場目指し異業種結集 13 総人口は1億2730万人( 年 少子化の一方で増えているのが 高齢者人口。内閣府によると日本 11 14 月末) 、うち 歳以上の高齢者 65 数は3190万人で高齢化率 ・ 10 年 は ・1%。これは主要国と比べ 齢者就業率も増えており、 1%と4人に1人の割合。ただ高 25 13 最も高い水準。一方、都道府県別 20 急速に進む高齢化に伴い、膨らむ一方の国民医療費を抑制する ため、政府は2013年6月発表の「日本再興戦略」の中で「国民 の健康寿命の延伸」を掲げるとともに、予防・健康・介護などを柱 にした「ヘルスケア産業」の振興を促した。全国を上回るペースで 高齢化が進む九州では、 年に同産業は7県で7兆円規模になる と試算され、すでに医療機器製造や福祉サービスなどに異業種か らの参入が相次ぐなど〝健康の産業化〟が加速している。 25 94 Zaikai Kyushu / FEB.2015 で高齢者率最高は秋田県の ・6 %、最低は沖縄県の ・4%。九 州では7県人口1311万人に対 し高齢者数は344万人、高齢化 年に約 兆円に達す トルの意 見 広 告を打 った。 健 保 連 によ る 続ければ ると同省は見ている。 万3612 年は 興」「戦略市場創造」 「国際 展 開 戦略」 の3プランを示した。 その中で注目された のが 戦 略 市 場 創 造 プランで、取り組む べき4テーマの冒頭 の延伸」を掲 げ「効果的な予防 に「国民の健康寿命 た。これは現役世代と高齢者の医 サービスや健康管理の充実により、 代 %、高齢者 %だったが、 きる社会の実現」を目指すとした。 健やかに生活し、老いることがで 療費割合が変化、 年度現役世 8万3004円増加し 万 6616 円 と 円 だったが、 当 たり 年1人 と、サラリーマンの年 訳は「年金」が ・7%、 「医療」 が ・9%を占め、介護対策費を 含む「福祉その他」は ・4%だ 間保険料は 前 出の人口問 題 研 究 所が ま とめ た 医 療 や 年 金 な どの 年 度、 費は 万1300円。給付費の内 を更新した。国民1人当たり給付 108兆5568億円と過去最高 率 ・2%(別表に県別データ) 。 社会保障給付費は このまま推移すると 年の九州の 高齢化率は ・0%と2・7人に1 人となる計算。 年 度国民医療 費は ・3兆 高 齢 化の影 響が顕 著に現れる のが医 療 費。厚 生労 働 省による と %、高齢者 具体的な目標数値として「予 防・健康維持」「治療」「介護・自立」 年度には現役世代 齢者の医療費を現役世代の健康 の3分野からなる健康寿命延伸 ったが、介護対策費は他を上回る 保 険 料で賄 うことになれば、現 産業の現在の国内市場規模 円(九 州4・8兆円)で、国民1 役世代の負担がさらに増すとして 円を %となる見通しで、このまま高 サービス利用者が増えたことや事 「今こそ高齢者医療制度の見直 円に拡大する。1年後に公表の 「改 伸びを示した。これは団塊の世代 業者が受け取る介護報酬が増額 しが必要」と強く訴えた。中小企 訂2014」では、さらに① 万8000円。う ち ( 年度から減額予定)されたこ 業のサラリーマンなどが加入する までに国民の健康寿命を1歳以上 兆 年 年までにメタボ人口を 年度までに ― 年度(1400万人)比 %減 ③ 歳の健診 ここで改めて健康寿命について 説明すると、健康寿命とは 年、 上げるとの目標を掲げた。 受診率を %( 年 ・7%)に 67 74 が 歳以上となるなど、高齢化で となどを挙 げ 全国健康保険協会(協会けんぽ) 延伸 ② 30 兆 ている。 でも「現役世代の負担増は限界に 兆円、 年に 「 この ま ま では健康保険 きている」として医療制度の抜本 年に を支えきれま 月、全国の サラ リ ーマン 予防サービス、 健康管理 充実で 年に 兆円市場 37 16 20 26 人 当 たり 高齢者医療制度の見直しを訴える健保連 の新聞広告 20 20 80 25 は、大 手 紙に して「日本再興戦略」を発表。成 活に制限なく生活できる期間と た指標で、健康上の問題で日常生 WHO(世界保健機関)が提唱し 00 とその家 族が 加入する健康 保険組合連合 10 40 08 20 定義されている。厚労省によると、 こうした事態を憂慮した政府 は 年6月、新たな成長戦略と 26 歳以上の医 療 費は ・2兆円 00 35 48 長への道 筋として「日 本 産 業 再 会(健保連) 20 的改革を求めている。 10 13 年 で 全 体の ・1%。1人 当 た り 38 07 14 12 せん」―昨年 07 192万7000円は 歳以下の 46 13 資料:厚生労働省 2001 04 11 刺激的なタイ Zaikai Kyushu / FEB.2015 95 25 10 13 年 07 2001 04 69.47 71.19 65 74.21 73.62 72.69 73.36 72.65 70.42 70 70.33 86.61 86.30 85.99 85.59 84.93 65 15 80.21 75 79.55 69.40 90 男性 80 78.64 79.19 78.07 女性 歳 85 平均寿命 健康寿命 平均寿命と健康寿命の推移 52 49 40 14 74 65 85 37 30 36 9・3倍。このまま医 療 費が伸び 九州各県の高齢者の状況 25 60 18 18 31 39 31 26 13 75 人 口 高齢者人口 高齢化率 高齢者就 平均寿命(年) 健康寿命(年) (千人) (千人) (%) 業率(%) 男性 女性 男性 女性 福 岡 5090 1230 24.2 17.12 79.30 86.48 69.67 72.72 佐 賀 840 219 26.1 20.50 79.28 86.58 70.34 73.64 長 崎 1397 390 27.9 16.87 78.88 86.30 69.14 73.05 熊 本 1801 491 27.2 19.06 80.29 86.98 70.58 73.84 大 分 1178 337 28.6 18.38 80.06 86.91 69.85 73.19 宮 崎 1120 310 27.6 19.58 79.70 86.61 71.06 74.62 鹿児島 1680 467 27.8 18.84 79.21 86.28 71.14 74.51 人口、高齢化率は2013年、高齢者就業率、平均寿命、健康寿命は2010年の統計 資料:厚生労働省ほか 年、女 性 ・ 年で、前 年 日 本 人の 健 康 寿 命 は 男 性 ・ 21 すでに政府は「国 民の健康増進」 「医 から健康寿命を差し引いた、いわ 実 現 を 掲 げ る とと すでに大分、宮崎 両県を軸にした「東 げられる。 ことが動機として挙 待できると判断した の掘り起こしと育成、利益を生み けん引する中核企業の創出、人材 これまでヘルスケアサービスの需 120の企業・行政・大学が加盟。 学 など企業・行 政・大 学 など約 要の顕在化とともに同サービスを 九州メディカルバレ んできた。合わせて活動の一環と もに、仕組みづくり 新 市 場 に挑 戦 する して各種セミナー開催のほか「ヘ ゆる介護を要するなど日常生活に 地 域 企 業が積 極 的 ルスケア産 業づくり」貢献大 賞 ー構想」などが始動、 出す仕組みづくりなどに取り組 な取り組みを行って を創設、昨年6月、サービス分野 を 年 業 環 境、健 康 投 資、 品質評価)からなる いるが、そういった状況を踏まえ でトゥルー・バランス(鹿児島市) 、 年の都道府県別健康寿命 ランキングで、九州トップは男性 「次世代ヘルスケア産業協議会」 て今後、健康寿命が延伸する社 崎(同8位) 。 みに が鹿児島(全国7位) 、女性が宮 月設置、健康寿命延伸 医療・福祉・介護分野でソフトケ 心疾患、糖尿病といった生活習慣 病で、日ごろの食 習 慣、運 動 習 慣といった生活習慣が深く関与し これらのニーズにビジネスの視点 で応える「健康の産業化」に取り 組むことが重要だとしている。 ク(同柳川市)といった 団体・ 企業を第1回表彰している。 ビス産業を積極的に創出すること。 解決するヘルスケア産業への潜在 的保険 外の予防・健 康 管理サー な解消策といわれているのが、公 て削減するかが大きな課題。有効 れる生活習慣病関連費をいかにし る。それだけに慢性期医療といわ (約 兆円)が毎年費やされてい ち医科診 療 医療 費の約3分の1 ニーズが高いとみたことや九州に 域」ととらえ、これらの諸課題を ペースで進んでいる「課題先進地 人口減少・高齢化が全国を上回る けられた同協議会は、九州地域を ルスケア産業推進元年」と位置づ 会」 が設立された。九州における 「ヘ これよりひと足早い 年7月 「 九 州ヘルスケア産 業 推 進 協 議 として発展させたい」といったコ 州をヘルスケア産業の先導的地域 第4のクラスターとして育成、九 環境、半導体、バイオ産業に次ぐ 工業大学長は「ヘルスケア産業を り、会長に就任の松永守央・九州 くとしている。協議会発足にあた は海外展開などの事業を図ってい サービス業の創出と集積、さらに 関連産業および医療・介護周辺 九州地域のヘルスケア産業に対す のが狙いだが、もう1つの目的が を通じて、地域活性化を支援する 不振に陥った企業の事業再生など に福岡オフィスを開設した。経営 東京、大阪に次いで福岡市・天神 援機構(旧企業再生支援機構)が、 ところで昨 年 月、政 府 系の 官民ファンド、地域経済活性化支 九州初の官民ファンド ヘルスケア産業を支援 年に公的保険外サ はロボット、半導体産業など関連 同時に目的実現に向けて関係 機 関が連携し、医 療・福祉機器 兆円 そうすれば ービス産業の市場 規模は 協議会には九州電力、九州大 る積極支援。 メントを寄せている。 ているといわれる。こうした生活 潜在ニーズが高い九州 急務の 「健康の産業化」 分野の市場創出および産業育成 日本人の死亡要 因の3分の2 近くが高血圧性疾、脳血管疾患、 の具体化に乗り出した。 12 している。現状は4兆円、 万人。 ービスなどとの高い相乗効果が期 (130万人の雇用創出)と試算 10 20 51 同機構はこれまで地域経済の活 11 習慣 病に対し、国民医療 費のう 込んだ「地域・産業の健康化」と、 ア(福岡県福津市) 、ファインテッ 会構築を目指すには地域を巻き のため、3つのワー 年のびた。平 均 寿 命 78 制限のある期間の短縮は、そのま 業の 創 出 」の 同 時 「新産 回調査の 年と比べ男性0・ 年、 療費の削減」 74 キンググループ(事 女 性0・ 59 10 産業の集積があり、医療・介護サ 13 11 13 10 10 96 Zaikai Kyushu / FEB.2015 19 ま健康寿命延伸につながる。ちな 年ごとに元気な高齢者が増えている 71 13 性化に向けた出資や融資を展開、 7兆1610億円に拡大すると見 の展開が期待できる。半面、創薬 など医薬品関連については福岡県 健康の産業化を進めるには九 州地域の特性を生かすことが不可 込まれている。そんな巨大市場を じめ九 電 グループ、西 鉄、九 電 欠。九州では全国に先駆け機能性 九州の最大の強みは何といって も農林水産資源。バイオクラスタ 日本航空などの経営 再建を手助 女酒造(福岡県久留米市) 、鮮魚 工、JR九州といった地場有力企 食品、健康食品に特化した九州 ー推進協では、そうした豊かな資 バイオ産業拠点推進会議の核であ 小 売 りの最上グループ(北九州 業がシニア向け住宅・福祉サービ 地域バイオクラスター推進協議会 源を生かして新産業の創出を目指 目指して、医療機器メーカーをは 月、機構のファンド運営子会社が、 スといった分野に参入するなど異 市)などを支援してきたが昨年9 業種が相次ぎ名乗りを挙げてお 年に設置、研究開発から商 け、九州では焼酎メーカーの紅乙 九州内外の地銀などと共同で「地 り、他の企業も九州のものづくり を 銀行、西日本シティ銀行が出資し を目的に設立。同ファンドに福岡 業の創出・拡大の支援を図ること など、地域におけるヘルスケア産 び経営ノウハウの提供などを行う スケア産業に対して資金供給およ 同ファンドは、日本再興戦略改 訂2014にも盛り込まれたヘル はすでに 社を超え、五十肩の治 九州経済産業局によると、半 導体関連企業の医療分野への参入 の伸びが突出している。 おける乳酸菌関連など整腸分野 食品市場が急成長、特にトクホに 健用食品(トクホ)などの機能性 また九州では健 康 食品、特 定保 大分、宮 崎 両県に旭化 成メディ 医療機器製造分野では、東九 州メディカルバレーの拠点である ズムの展開が予想されている。 温泉を生かした健康長寿型ツーリ ているほか、九州全域に点在する を占める通信販売の大手が集積し でに健康食品の販売ルートの3割 していくか商機をうかがっている。 品化・事業化の体制を整えた。す 「農」を基盤とした健康寿命延 産業化が進行中で、特に「食」と ドによる医福食農連携などの6次 療・福祉サイドと食料・農業サイ 築を目標に掲げている。すでに医 ード・健康アイランド九州」の構 食品の開発・量産化拠点による「フ 業と連携した機能性食品・健康 しており、予防医学・サービス産 ルが低いという指摘もある。 がなく、全国的にみてポテンシャ る久留米市・鳥栖市以外に集積 域ヘルスケア産業支援ファンド」 やサービスのノウハウをどう生か 九州の特性を生かした 機能性食品開発に活路 を立ち上げた。 ていることから、両行の拠点であ 07 らえ、健康に関心がある層だけが 伸産業の成長が期待されている。 ィポリスがん粒子線 参加する、これまでの政策から脱 カルなどの有力企業が集積、製造 治療研究所」 (鹿児 却し、市民だれもが参加し、生活 療器具、リハビリ機器、抗がん剤 島県指宿市)や「九 習慣病予防および寝たきり予防 る福岡に足場を設けて、九州で医 州 国 際 重 粒 子 線が を可能とする健康まちづくりを 出荷額で全国上位を占めているこ ん治療センター」 (佐 自治体間連携で推進するとした 効果の検知器などの製造が行われ 賀県鳥栖市)といっ 「スマートウエルネスシティー構 療・介護事業を展開する企業を た 最 先 端の 粒 子 線 想」の具体化が進んでいる。 ほかに一部自治体では〝健幸〟 を「まちづくり政策」の中核にと 治療設備が整い、メ とや、治療分野においても「メデ ディカルツーリズム ているという。 20 探り、支援・協力を行っていく構 えだ。ヘルスケア産業への投資と いえば昨年5月、日本初の住宅な どヘルスケア関連施設に特化した リートの日本ヘルスケア投資法人 が東証リート市場に上場、大変な 評判となった。 一方、 高 齢 化 が 急 速 に 進 む 九 州 で は、 年 に 7 県 全 体 で ヘルス ケ ア 産 業 の 市 場 規 模 が (編集委員 橋本 昭) =おわり= Zaikai Kyushu / FEB.2015 97 25 公園をウオーキングする人たち (上) とリハビリ に励む人
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