実地医におけるRA治療 - エーザイの一般生活者向けサイト | Eisai.jp

万 波 健 二
RA克服に向けた主治医の役割
実地医におけるRA治療
激変するRA治療
はじめに
主治医の治療がうまくいかなければ、RA患
近年、メトトレキサート︵以下MTX︶の承
者の関節機能は障害され制限された日常生活と
認や複数の免疫抑制剤が使用可能となり、関節
製剤︶が
Bio
ある。
製剤がRA治療薬として承認された
Bio
とき﹁RA治療は care
から cure
できる病気に
なった﹂と言われてきたが、 年経って﹁RA
一生が左右されることを肝に銘じておくべきで
リウマチ︵以下RA︶治療は飛躍的に良くなり、 なるため、主治医の治療内容によりRA患者の
約 年前には生物学的製剤︵以下
出現し、その後も続々と Bio
製剤が承認され、
今やRAは糖尿病や高血圧症と同様にコントロ
ール可能な慢性疾患となった。ただし、RAは
糖尿病や高血圧症と異なり、患者の生活習慣が
治療成績に与える影響は少なく、あくまでも主
はたとえ cure
されても、 care
し続けなければ
いけない病気である﹂と実感する。
治医の治療内容が治療成績を大きく左右する。
以前とは比較にならないほど治療成績は良く
なったが、たとえMTX等の抗RA薬で寛解が
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二次無効により他剤へのスイッチもしばしば行
性が再燃し Bio
製剤に変更しうまく寛解に導い
ても呼吸器等の感染症への注意が必要であり、
与量の調節やスイッチングが必要であり、活動
得られても副作用に注意しつつデリケートな投
るためには、患者の協力が不可欠なのである。
らない。副作用を未然に防ぎ、早期の寛解を得
ることをRA患者に理解してもらわなければな
患者の自覚症状や体調の変化が薬物の効果判定
経済的負担についても説明しておく必要がある。
薬物治療について
だけでなく、副作用の早期発見に最も重要であ
われる。また幸いなことに長期間の寛解が得ら
れたとしても、抗RA薬の減量や、 Bio
製剤の
休薬も考慮しなければならない。RA治療とい
RA治療を行うにあたって、主治医は患者の
っても年齢、合併症、RAの病期、患者の性格
利益を第一に考えた治療をしなければならない。
して長期間にわたりRAを克服していくことが
を十分に理解し、主治医が患者のパートナーと
べきではなく、早期に効果が認められる抗RA
決してステロイドでごまかすような治療を行う
などにより、治療の満足度も異なる。患者背景
重要である。
薬︵ Bio
製剤も含む︶を選択し、寛解に導く努
力をすることが必要である。
RAと診断したら
RA活動性の指標はDAS CRP、S D
AI等が用いられているが、CRPはステロイ
薬物療法︱ 薬の種類や効果とその位置付け、
な部分が多くなる。当院では、ランスバリー指
ドの有無、疼痛腫脹関節は検者やRAの stage
、
VASの評価は患者の年齢や性格により、曖昧
治療を開始する前に、患者に︵できれば家族
も一緒に︶
、RAについて説明するとともに、
また副作用についても十分説明する。同時に、
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数で用いられていた朝のこわばり時間や水銀柱
前後の効果判定にも使用している。
RA治療において常に頭に入れておくこと
を用いた握力測定を診察毎に行い記録している
が、早期RA患者ではRA活動性と相関するよ
1.
セーフティネットの確立
なる日常生活動作のチェックリスト︵表︶を初
などの発現も増えている。
鼻腔炎等々︶や血液疾患︵リンパ増殖性疾患︶
実だが、抗RA薬︵ Bio
製剤も含む︶の進歩と
ともに難治性の感染症︵非結核性抗酸菌症、副
性肺炎や骨髄抑制が問題となったのは周知の事
開業以来、力を入れてきたのがセーフティネ
ットの確立である。MTXの普及につれて間質
うに思われる。いずれにせよ、患者の目に見え
る再現性のある客観的評価が必要である。
身体機能障害度評価として mHAQ
が用いら
れているが、個々の日常生活動作を表すには項
目が少なく、当院では患者の日常生活動作を詳
しく評価するために、時代に即した 項目から
診時に記入してもらい、制限された動作がRA
者の治療の目的は、早期に関節炎、関節痛を軽
チェックしている。関節痛にて来院したRA患
血液内科、耳鼻科なども、必要が生じた場合は
化が把握できる︶
。消化器内科、循環器内科、
に所見を記載して保存することで、経年的な変
ていただいている︵独自に作成した読影シート
によるものか、合併症によるものかを説明し、
胸部疾患に関しては初診時および年1回は胸
部X線を撮影し、近隣の呼吸器専門医に読影し
減し、RA発症以前の日常生活動作を獲得する
RAの治療中にその動作が改善されているかを
ことであり、それを継続することがゴールであ
診察室から電話でダイレクトに専門医の診察を
要請し、患者の安全と利便性を高めている。連
ると考えられる。また当院では、このチェック
リストを高齢の骨粗鬆症患者や運動器疾患治療
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(筆者作成)
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絡が入るようになっている。
携が進み、異常があれば紹介医からもすぐに連
じた治療を行う。
粗鬆症を合併していることも多く、進行度に応
当院では年間4、5 例のリンパ増殖性疾患
以上述べたことは、約 年間実地医としてR
︵悪性リンパ腫を含む︶発現があるが、前駆症
A患者と接している中で日頃から心がけている
を訴えることもあるので、十分な問診を行う必
に考え、身の丈に応じた薬剤の選択を行ってい
ことであり、治療においては患者の利益を第一
状として全身 怠感、口内炎、食欲不振、発熱
要がある。今後リンパ増殖性疾患が増加するこ
る。
︵医療法人
万波整形外科
理事長︶
とが予測され、血液専門医に、RA治療におい
てMTXや Bio
製剤が不可欠であることを十分
に理解してもらい、連携していかなければなら
ない。
2.
高齢者RA
高齢RA患者では変形性膝関節症や脊柱管狭
窄症等の運動器疾患を合併していることも多く、
自覚症状や日常生活動作のチェックを参考にし
て、その症状がRAによるものか、合併症によ
るものかを説明する。腎機能障害を生じている
ことも多く、クレアチニンクリアランスの測定
により、薬剤の減量や変更を考える。また、骨
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